子宮頸ガン〜ワクチン、異形成

子宮頸癌ワクチン

子宮頸癌ワクチンの接種が10年遅れてしまった日本では、子宮頸癌にかかる人が年間約1万人、亡くなる人が約3000人と増加しています。https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=10

公費でワクチンを受ける事が出来るキャッチアップ世代の方は、受けられる期限が近づいています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html

次の2つを満たす方が、あらためて接種の機会をご提供する対象となります。

CIN1、CIN2、CIN3 20~30歳代の女性に急速に増加

子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階(前がん病変)です。別名で子宮頸部上皮内腫瘍(Cervical Intraepithelial Neoplasia:略してCIN)とも呼ばれます。子宮頸部異形成はその病変の程度によって、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内がん(CIN3)の3種類があります。近年子宮頸部異形成や子宮頸がんは、20~30歳代の女性に急速に増加しています。

子宮頸部の扁平上皮病変は、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がん、微小浸潤扁平上皮がん、浸潤がんと段階的に進展することがわかっています。

子宮頸部異形成とHPV

子宮頸部異形成と子宮頸がんの主な原因は、ハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染であることが知られています。HPV感染は多くの場合、性交渉により生じます。しかしながらハイリスク型HPVに感染した場合でも、多くの場合が自然消失します。一方でHPV感染が持続した症例の中の一部が、数年~10年という期間を経て、子宮頸がんへ進展すると言われています。こういったHPV感染と子宮頸がんの成り立ちから見た場合、性交渉を開始する(sexual debut)と考えられる10歳代から20歳代前半にかけて、HPVの初感染が生ずる可能性が高いと考えられます。ハイリスク型HPVのうち、HPV 16型、18型、31型、33型、35型、45型、52型、58型は、特に注意が必要なタイプとして知られています。

子宮頸部異形成の診断

子宮頸部異形成の診断は、細胞診、コルポスコピー診、組織診(生検)と呼ばれる方法で行われます。細胞診は子宮頸がん検診における一次検診であり、子宮頸部(入り口部分)を擦って細胞を取り、顕微鏡で検査します。細胞診検査で異常がみられた場合(LSIL、ASC-US、ASC-H、HSIL、SCC、AGCなど)、二次検診(精密検査)としてコルポスコピー診と組織診が行われます。細胞診、コルポスコピー診、組織診の結果を総合し、治療方針を検討します。

軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)の場合は、直ちに治療するのではなく経過観察することが多いです。その理由は、治療しなくても自然治癒(消退)することがあるからです。CIN1やCIN2の場合、約半数の患者さんでは自然治癒(消退)すると言われています。一方、高度異形成・上皮内がん(CIN3)、CIN2が長期に渡って遷延する場合、CIN2で特に注意が必要なハイリスク型HPVが検出された場合には、治療が考慮されます。

CIN3への進展の可能性

CIN2が5年以内にCIN3へ進展する可能性はHPV16, 18, 31, 33, 35, 52, 58型の7タイプのいずれかが陽性の場合は40.5%であるのに対して,陰性の場合は8.3%と報告されています。同様に,CIN1が5年以内にCIN3へ進展するリスクは同7タイプ陽性の場合は16.6%であったのに対して陰性の場合は3.3%にすぎません。このようにHPVタイプによってCIN3への進展リスクは大きく異なるため,わが国のガイドラインではCIN1/2の進展リスクを評価するためにHPVタイピング検査を行うことを推奨しています。HPV45型は日本人での検出頻度は低いのですが,欧米では3番目に頸癌から検出されるタイプですので,上記7タイプにHPV45型を加えた8タイプを要注意のグループとしてわけて管理することを推奨しています。

※精密検査(コルポ生検)でCIN1、CIN2が出た場合、HPVの型を特定すること(タイピング)が保険診療で行うことができます。(3割自己負担で約7000円)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901219.pdf

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901220.pdf

参考文献

子宮頸癌コルポスコピー下生検でのCIN1/2の外来管理、わが国のガイドラインではHPVタイピング検査の実施を推奨。No.4798 (2016年04月09日発行) P.57 松本光司 (筑波大学医学医療系産科婦人科学准教授)

婦人科腫瘍・婦人科がん/東邦大学医療センター