漢方薬
女性ホルモンの変化は女性特有の疾患に大きな影響を与えています。閉経時に起こる更年期障害は、その代表例です。この他、初経時、妊娠・分娩時、普段の月経時などには、女性ホルモンの変化によって冷え、肩こり、イライラ感、不眠などの症状が引き起こされることもあります。こうした症状の中には、西洋医学で不定愁訴、自律神経失調症などに当てはめざるを得ないものも多く、積極的な治療が難しいのが現状です。
これに対し、漢方治療は身体全体のバランスを整えるように作用するため、女性ホルモンの変化によって生じる様々な症状や、どこが悪いのかを特定しにくい病態を改善する際に効果を発揮します。日本人女性の平均寿命が87歳を超え、閉経後30年以上を生きることになる女性にとって、この長い年月をいかに有意義に過ごすのかは重要なテーマです。そのような意味においても、漢方治療を取り入れて治療を進めていくことは大切なのです。
婦人科で用いられる漢方薬
更年期には不定愁訴が少なからずみられます。こうした症状は漢方が最も得意とする領域なので、更年期障害の治療には漢方を併用することがよくあります。具体的には、女性ホルモンのバランスを整える作用を期待し、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などを処方します。この3つは使用頻度が高く、三大漢方婦人薬とも呼ばれています。
当帰芍薬散
当帰芍薬散は、血行障害やうっ血を是正し、血液の巡りをよくする目的で主に処方されます。冷えや貧血症状、めまい、頭重感の強い方には最適です。婦人科では、月経不順や月経異常、月経痛、更年期障害の改善を目的として使われることが多いです。
漢方処方の特徴
漢方療法では、一人一人の体質や体調、症状をもとに診断し、個々の患者様に最も合った漢方薬を処方します。そのため、同じ症状・病名でも、人によって異なる漢方薬が処方されることがあります。詳しい内容は患者様が受診されたときにご説明いたします。
冷え性
つねに手足や腰が冷たい症状・体質が冷え性です。
こんな症状でお困りではないでしょうか。
- 冬になると手足の先が冷えて、電気毛布を使用してもなかなか寝付けない。
- 夏季は職場で冷房が強すぎて、腰痛や頭痛を感じることがある。
冷え性が原因で頭痛・肩こり・腹痛・便秘・腰痛・手足のむくみ・月経不順・慢性疲労感・肌荒れ・集中力低下・抑うつ感・不眠症などを引き起こす場合があります。
冷え性の治療には原因を一緒に考えお一人お一人に最適な治療をご提案します。
冷え性の治療法には抹消循環改善剤、各種ホルモン剤、ビタミン剤や酵素剤などの生体賦活剤などがあげられますが、根本的な治療法としては十分な方策がないのが現状です。
抹消の血液循環の悪化と説明される冷え性ですが、漢方の考え方では冷え性を生体の3つの要素、気・血・水全ての異常ととらえられています。
例えば、ストレスで気のめぐりが滞った状態の方には気剤を、血液循環を改善するためには駆お血剤(くおけつざい)を、間質に浮腫を生じた方には水毒治療剤を用います。
薬物療法以外では、睡眠、ストレス解消、食餌療法、運動療法などの生活習慣改善も大切です。また、リラックス効果のあるラベンダーやローマンカモミール、ホルモン調節作用をもつゼラニウムやクラリセージなどの植物精油を用いたアロマセラピーやハーブも有効です。